イベントレポート

ジュニアロースクール・イベントレポート(2022年度(小学生部門))

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更新日:2023年05月02日

1 はじめに

2023年3月29日、小学生対象のジュニアロースクールを開催しました。
ジュニアロースクールは、法教育の普及・推進に関する委員会が例年実施しているイベントであり、参加した生徒の皆さんに、授業を通じて法的な考え方を理解し、実践いただき、身に付けてもらうことを目的としています。
今年度も、昨年度に引き続き、オンラインでの実施となりました。

2 内容

今年度は、「ウサギを逃がしちゃったのは、リョウくん?」という教材を使用して、小学校で起きた事件の犯人がリョウくんなのか否かを、様々な事実に基づいて判断するという事実認定の体験をしてもらいました。
当日は、まず、簡単な設問を用いて、「事実」に対して「理由付け(意味付け・評価)」を行って「結論」を出す、という事実認定の枠組みで考える練習をしてもらいました。

その後、スライドを利用しながら、ある小学校のウサギ小屋からウサギがいなくなってしまい、その日ウサギ小屋の近くで目撃されたリョウくんが、ウサギを逃がした犯人かもしれないと疑われているという事件の概要を説明しました。そして、ウサギ小屋の近くに落ちていた"レアカード"の存在、ウサギ小屋の鍵の状態、リョウくんを目撃した用務員さんやリョウくんの友達の証言など、リョウくんが犯人なのか否かを判断するために参考になりそうな事実を、いくつか紹介しました。
その後は、いよいよ、リョウくんに直接話を聞く「質問タイム」に移ります。子どもたちには、グループワークで、リョウくんにどんなことを聞きたいかを考えてもらったうえ、リョウくん役の弁護士に対して質問をし、リョウくんがウサギを逃がしてしまった犯人なのか否かを判断するのに必要な事実を聴き取ってもらいました。オンライン上のやり取りではありましたが、子どもたちからは次々と手が挙がり、リョウくんの回答を聞いて更に疑問に思った点を尋ねていく子どもたちもいて、想定していた時間を過ぎてしまうほど、とても盛り上がりました。子どもたちも、気になったことを自分の言葉で尋ねることで、リョウくんが犯人なのか否かを判断する材料を多く集められたと思います。

最後に、また班に分かれて、今までに明らかになった多数の「事実」を取捨選択して、それぞれの事実について「理由付け(意味付け)」をし、リョウくんがウサギを逃がしてしまった犯人なのか否かを判断してもらいました。班ごとの人数が5~6名(子どもたち3~4名、弁護士2名)と少人数であったからか、一人一人が積極的に意見を述べる姿が見られ、「この事実から、こういうことが言えるのではないか。」という意見に対し、「でも、別の事実によると、そうともいえないのではないか。」、「証拠不十分なのだから、犯人とはいえないのではないか。」といった話し合いが積極的に行われていました。
結論としては、「リョウくんはウサギを逃がしてしまった犯人ではない」という結論になった班と「リョウくんはウサギを逃がしてしまった犯人である」という結論になった班は、ほぼ半分ずつに分かれましたが、弁護士による講評では、「どちらの結論が正解ということではなく、気になった事実を組み合わせて、どのような理由付け(意味付け)でその結論に至ったのか否かを、説得的に説明することができていたか否かが大切であり、どの班も、それを実行することができていたのが素晴らしかった」ことを、子どもたちに伝えました。子どもたちも、他の班の意見を聞きながら「なるほど!」という表情を見せてくれており、説得的な説明とはどのようなものであるのかを、実感することができたのではないかと思っています。

3 最後に

この授業を通して、事実に対して理由付け(意味付け)を行って結論を出すという事実認定の考え方、同じ事実について全く反対の理由付け(意味付け)をすることで結論が異なる可能性があるという事実認定の面白さと難しさ、そして、説得的な説明をするためには、事実や結論だけを挙げるのではなく、理由付け(意味付け)を説明することが必要になることを、学んでもらえたと思っています。授業後に行ったアンケートでも、「いろいろな意見が聞けて自分の考えを深めることができた」、「話し合ってみんなの意見をきいて納得できるのが楽しかった」等の意見が寄せられました。
授業後には、短い時間ではありますが、参加弁護士との質疑応答の機会を設けました。法曹に興味があるという子どもたちも多く、弁護士という職業の魅力や面白さを、より具体的に知ってもらう良い機会になったと感じています。
2023年度も同様の企画を行う予定ですので、多くの小学生のみなさんにご参加いただけたら幸いです。

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